私は、以前は大手企業に勤務しており、収入も少し余裕があったので
洋服にはたくさん投資していました。特にイタリアのいわゆるクラ
シコイタリアという、ミラノなどのエグゼクティブたちに好まれて
いる、伝統的なデザインのブランドを、よく購入していました。
(イタリア在住のアパレル関係の方に聞いたら、エグゼクティブは
既成服ではなく、オーダーメイドを着るのが一般的だそうです。
では誰が着ているんでしょう!?)
特にイタリアブランドは、生地のクオリオティが大変高く、シャツ、
またはスーツにしても番手の細い糸で仕上げられ、綿、ウールでも
シルクのような手触りのものが多く、そこが一番気に入っていました。
ただし、以前から気になることが1点ありました。それはボタンや、
裏地の縫製がしっかり縫い付けられていないため、強く引っ張ったり
すると、取れたり、破れたりしてしまうのです。イタリアの職人の
技術力は、大変高いのにも関わらず、なぜ、こんなに取れやすく
なっているのだろう、それが永年の疑問でした。
最近、自分でも輸入の仕事を通して、その疑問が解けました。
イタリアのフェラーリという車で説明するとわかりやすいのですが、
フェラーリはボディがグラスファイバーでできているため、250kmで
ぶつかったら、ボディは粉々になってしまい、ドライバーの命も保証
できないような作りになっています。
一方、ベンツやボルボといった車は、ぶつかってもドライバーへの
影響を最小限にする技術で安全性を売りにしています。
イタリア職人にしてみれば、ベンツやボルボを否定しないものの、
フェラーリが同じことをすれば、あの流れるような世界一セクシーと
いわれるボディのデザインが実現できなくなってしまうため、今の
方向性を変えるつもりはないそうです。
ぶつかって壊れたら、直せばいい、ぶつかっても壊れないように
したら、無骨いデザインになってしまう、洋服も同じで、ボタンや
裏地は取れたら付け直せば良い、取れないよう、破れないように
したら、繊細で美しい洋服が作り出せない...のだそうです。
こんなことがわかると、イタリアデザインが、より愛らしく、
よりセクシーに思ったりしませんか?